株式会社H2&DX社会研究所
スウェージロックの配管を店舗デザインに!
水素を「5感」で伝え、水素が当たり前に使われる社会をつくる

株式会社H2&DX社会研究所(以下、H2&DX社)は、水素の利活用を推進する企業として、水素調理器具の製造・販売やコンサルティングを行っています。水素を「使う」ことに特化し、5感を通じてその魅力を伝えるサービスを提供。水素燃焼を用いた革新的な調理手法や、水素燃料電池を活用したコンサートのエネルギー供給など、多岐にわたる取り組みを行っています。
2024年4月、同社は、世界初・水素調理を用いた水素焼レストラン「icHi(いち)」を都内にオープン。次世代の食体験を提供するだけでなく、水素技術を身近に感じるショールームとしての役割も果たしています。スウェージロックをはじめとするパートナー企業の協力により、「icHi」の店舗設計は革新的なものとなりました。特にスウェージロックの配管は、目に見えない水素を感じてもらうための重要な要素として、店内のデザインに組み込まれています。
今回は、H2&DX社の取り組みや「icHi」への想い、そしてスウェージロックとのパートナーシップについて、代表取締役の福田峰之氏にお話を伺いました。
株式会社H2&DX社会研究所について教えてください。
多摩大学 ルール形成戦略研究所のスピンアウト・ベンチャーとして設立しました。この研究所での水素利活用に関する研究が、当社の基盤となっています。
水素はこれまで「つくる・はこぶ・ためる」を中心に社会への浸透が図られてきましたが、生活者として水素を身近に感じている人は、まだまだ少ない。どうしたら多くの方にご理解いただけるかは、大きなテーマです。水素社会実現のためには、「つくる・はこぶ・ためる」のその先、「つかう」という視点が非常に重要です。そのためH2&DX社は、「つかう」に特化して事業展開しています。中でも「5感」に訴えることを重視し、食やエンターテイメントの分野で、水素技術の利活用に取り組んできました。特に、生活者の身近にあり、5感に訴えやすいのは「食」です。食は、水素を普及させるために欠かせない分野と考え、水素コンロの製造販売やコンサルティングなどに力を入れています。その一環として、直営レストラン「icHi」を開業しました。
水素焼レストラン「icHi(いち)」は、どんなレストランですか?
「icHi」は、水素で調理された水素焼コースやワイン・ペアリングを楽しめるレストランです。水素燃焼による炎の美しさやおいしさだけでなく、次世代の食・飲食店を表すシンボル店舗となることを目指しています。そのため、ショールームとしての要素も重視しました。一般のお客さまだけでなく、飲食店関係者にも、仕組みやビジョンを身近に感じていただける設計にしています。
「icHi」の設計や店舗づくりには、スウェージロックをはじめ、多種多様な企業がパートナーとして参画してくれています。水素コンロはもちろん、パートナーが提供してくれる水素ボンベや水素用配管、燃料電池など、一般的なレストランであれば「隠す」存在であるインフラ設備を、「魅せる」ことにこだわり、展示・使用しています。特に水素用配管は、「水素の象徴」として、店舗デザインの重要な役割を担っています。
配管を「魅せる」という発想に至った経緯を教えてください。
一般的に、配管は見せないようにするものだと思います。でも、私は最初から、配管を魅せることにこだわっていました。
魅せる理由の一つは、「ここを水素が通っているんです」と説明しやすいからです。目に見えない水素をどのように伝えるかを考えた結果ですね。壁への配管の這わせ方にもこだわりました。あえて、お客さまからよく見えるように設置しています。ちなみにこの水素用配管は5本あるのですが、実は、水素が通っているのは2本で、残り3本には流体が通っていません。将来配管として使用する可能性もありますが、使わなかったとしても、デザインとして5本あるのが美しいと考えました。
魅せる理由のもう一つは、バックヤードの方にも表舞台に出ていただきたいからです。水素調理器だけでは、水素調理は提供できません。水素ボンベや配管などの設備があってこそ。しかし、それらは隠されがちなものですので、パートナーをはじめとする提供元の方たちは、店舗づくりに参画している感覚を持ちづらいのではないかと思っています。表で魅せるという手法があってもいい。自分たちの仕事を魅せることは、自信にもつながるのではないでしょうか。店舗を一緒につくっていることを感じていただきたいと考え、表で魅せることにこだわりました。
スウェージロックとのパートナーシップについて、さらに詳しく聞かせてください。
パートナーの公募を行った際、スウェージロックが応募してくれたことが出会いのきっかけでした。お話を聞かせていただくと、スウェージロックは、次の時代のために、そして環境のために、できることを模索していることがわかりました。未来のために――という気持ちが共鳴しあい、ぜひ一緒にやろうと。
それだけでなく、スウェージロックが水素を取り扱ってきた実績。そこに安心感、信頼感を抱きました。水素を安全に取り扱うために、スウェージロックの技術と経験は不可欠でした。店舗づくりでは、さまざまな問題に直面しました。一般的には裏に設置する設備を室内に置くということで、サイズの調整には特に苦労しました。例えば水素ボンベを入れるガス供給キャビネットのサイズが問題になったのですが、スウェージロックは効率的な配管レイアウトのアイデアで、見事に解決してくれました。信頼があるからこそ、「Swagelok® 」のロゴも堂々と掲示することができます。このロゴはかっこいいですからね。
流体を通さない3本の配管については、スウェージロックの中できっと議論が巻き起こったことでしょう。なぜ使わない配管が必要なのかと。営業担当者は、大変だったかもしれません。しかし、私たちのビジョンや想いを共有し、プロジェクトを進める中で意識が変わってきたようです。「チューブ配管で、コート・ハンガーを作りませんか?」「継手は、串立てにも使えそうですね」このような斬新なアイデアをたくさん出してくださるようになりました。スウェージロックの皆さんの柔軟な対応と発想には、本当に助けられました。
おかげさまで、知恵と機能とデザインが融合された水素用配管はお客さまの目にとまりやすく、「水素を目で感じて」いただけているようです。料理についてはもちろん、店内のデザインや設備についてもお客さまから質問をいただくことが多く、関心を寄せていただけていると感じます。
水素社会の実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。
私たちは今、見えない水素に関心をもってもらうため、「5感」に訴えることにこだわっていますが、いつか水素が当たり前の社会になれば、この取り組みは不要になります。そんな社会を作るために活動しています。
2050年までに多くの家庭や飲食店に水素調理設備を普及させ、世界の飲食シーンから二酸化炭素をなくしたいと考えています。その一環で現在、水素式無煙ロースターの開発プロジェクトを進めており、その一部にはスウェージロックの製品を採用しています。これが実用化できれば、さらに多くの調理現場で水素の利活用がいっそう進むのではないかと期待しています。さらに、製造業やエネルギー産業など、産業用途への進出も視野に入れています。
カーボン・ニュートラル達成のためには、弊社だけの努力では足りず、多くのパートナーと協力することが不可欠です。今あるパートナー企業の一つでも欠けていたら、「icHi」はできませんでした。これからも、スウェージロックをはじめとするパートナー企業と共にさまざまなプロジェクトに挑戦し、水素社会の実現に向けて走っていきます。
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スウェージロック・ジャパン 営業担当のコメント H2&DX社と取り組ませていただいた本プロジェクトは、弊社にとって、水素エネルギー普及への貢献について改めて考える機会となりました。飲食業界におけるCO2 削減を水素エネルギーの活用によって実現するという福田氏の革新的なアイデアと熱意に感銘を受けました。また、水素エネルギーを広く、多くの方々に「5感」で理解していただくための創意工夫も、このプロジェクトの魅力の一つだったと思います。 また、厨房まで安全に配管を設置するため、限られたレストラン・スペースに水素ガス供給キャビネットを配置する必要がありました。キャビネットの仕様については何度も試行錯誤を重ね、配管のデザインはもちろん、水素ガス供給キャビネット内の配管レイアウトにも細心の注意を払い、無事に納入することができました。水素を「5感」に伝える同社のビジョンと「社会から信頼される流体システムのエキスパートになる」 というスウェージロックのビジョンには親和性があると感じています。
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