株式会社高砂ケミカル

連続フロー合成技術の実用化に欠かせなかったスウェージロック製品
優れた品質や耐久性を評価

近年、反応管に原料を流す事で連続的に化学製品を合成することができる「連続フロー合成」と呼ばれる技術に注目が集まっています。株式会社高砂ケミカルは、精密化学品の合成において、その高い技術力で新しい道を切り開いてきたリーディング・カンパニーです。同社が実用化にこぎつけた連続フロー合成技術に、スウェージロック製品がどのように貢献したのか、株式会社高砂ケミカル代表取締役社長の齊藤隆夫さまにお話を伺いました。

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株式会社高砂ケミカル
代表取締役社長  齊藤 隆夫氏

御社の事業内容について教えてください。

株式会社高砂ケミカルは、高砂香料工業グループの製造拠点のひとつとして、食品香料や合成香料、医薬品原体および中間体、有機電子材料などの受託生産を行っています。社員は約70名という少数精鋭の部隊で、実験的な試みにも数多く挑戦しています。我々がトライアルとしてやってみたものが、技術移転という形でより大きな工場に導入されることもありますね。

スウェージロック製品を導入した背景を教えてください。

スウェージロック製品を本格的に導入したのは2012年です。当時、我々は取引先のひとつである大手製薬企業さまと、連続フロー合成技術を活用した医薬品の化学合成に着手しようとしていました。その際、その製薬企業さまから、「スウェージロック製品を使って欲しい」というご要望をいただいたのです。「品質や耐久性に優れていて、実績がある」ということが理由でしたが、わざわざ新しく取り寄せて使うことになりますし、我々としては、当初スウェージロック製品への切り替えには消極的でした。ところが、実際に使ってみて分かったのは、確かに品質も耐久性も非常に高いということ。スウェージロック製品は、高温下でも品質に問題が出ないし、部品が固着しないのでメンテナンスの際に取り外すこともできるわけです。使ってみて、良さが分かりました。一度得た信頼は大きいですね。

スウェージロック製品導入のきっかけとなった、
連続フロー合成とはどのような技術でしょうか。

例えばご家庭でカレーを作るとします。お鍋で作ると毎回、味が違いますよね。同じルーを使っても、毎回味が変わるし、焦げてしまうこともあります。それが、ひとつの釜で材料を混ぜ合わせる、バッチ法と呼ばれる従来の方式です。一方、連続フロー合成というのは、例えるなら、水道の蛇口を開けている間は物ができるというような、画一的な連続生産を可能にする技術なのです。カレーの例でいう、焦げも味のばらつきもない。原料を流せば、ずっと同じ味のカレーが自動的にできるわけです。

だから、生産効率や歩留まりが非常に高い。医薬品は、同じ品質を保証しなければいけませんので、革新的な化学合成技術といえます。 連続フロー合成技術はヨーロッパやアメリカの方が日本より少し進んでいて、海外ではスウェージロック製品を使うことがスタンダードなのです。どこで見てもスウェージロック製品が使われているので、「スウェージロック製品を入れれば安心だ」と、いわば安心のシンボルのようになっていることは確かだと思います。特にエア駆動バルブの耐久性は、非常に優れていると思います。導入して何年にもなりますけど、2012年から一度も取り換えが必要ない程です。

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パイプフローリアクターでの使用例
画像提供: 株式会社高砂ケミカル

今、連続フロー合成技術が注目を集める背景は何でしょうか。

いくつか理由があると思います。まずひとつは、連続フロー合成は省エネルギーな技術であるという点です。世界のエネルギーは将来、間違いなく足りなくなります。2050年には原油換算で200億トンのエネルギー需要が見込まれると試算されていますが、これは現在の約1.6倍の需要です。あらゆる面で省エネルギー化はますます重要になりますので、その意味で連続フロー合成技術が今注目されています。さらに、日本では少子高齢化の問題があります。日本の労働者人口は2050年には現在の約 4 割(3,000 万人)が減少するといわれています。当然、今のままのビジネス・モデルではやっていけなくなる時代が来る。かといって、少子高齢化が日本にとって致命的なリスクかというと、今と同じ生産能力を保ったまま省人化ができれば、利益は生まれますよね。そういった意味で、連続フロー合成のような技術は時代のニーズに合っています。あとは、地震などの自然災害のリスクを考えた場合です。連続フロー合成のシステムというのは、従来の方式に比べてコンパクトかつポータビリティに優れています。どこにでも持って行けて、設置できるというのは大きなメリットです。そして最後に、少量多品種の生産が求められる時代になってきたということも、連続フロー合成技術に注目が集まる背景にはあると思います。例えば医薬品の話でいうと、いわゆるメガドラッグといわれるものは、かつてより少なくなってきています。また、連続生産は製剤化の方が先に進んでいますから、原料の歩留まりがとても高くなったのです。それによって、必要な原料もどんどん少なくなるわけですから、連続フロー合成のように、少量から原料を生産できる方法は、少量多品種の生産には向いているといえます。

連続フロー合成技術の実用化にあたって、
スウェージロック製品がどのように役に立っていますか?

連続フロー合成技術の実用化については、すべてがチャレンジでしたね。スウェージロック製品が無ければできなかったかもしれません。スウェージロック製品は、まず熱に対する耐久性が高い。それと、そのような環境でも着脱性能が低下しないということも利点だと思います。エルボーで付けると取り外しができますので、例えば、洗浄後の清浄度確認の必要があれば、そこを外してスワブによる確認をすることができます。これは他にない特徴で、連続フロー合成をやる上でも大きなメリットだと感じています。日本では高圧ガス規制が厳しく、パイプを曲げたり溶接したりという点には非常に気を使います。繰り返して取り外しや再取り付けができる継手は便利ですね。今一番使っているのは、継手の部分やエルボーです。

また、品質の安定性が盤石であるということはもちろんですが、営業担当の方がいつも前向きに我々の挑戦に協力してくれることも、評価の高い点です。最終的にはビジネスは人と人との信頼関係なわけですから、この点はとても大切なことだと思います。弊社は地方の離れたところにも製造拠点がありますが、どこにでもすぐに来てくれるとか、相談に乗ってくれるということはかなり大きいですね。

スウェージロックに今後期待することを教えてください。

連続フロー合成は、今まさに産官学でさまざまな連携のスキームを作っているところですので、スウェージロックにも良い技術は惜しみなく提供して欲しいですね。我々としてもできるだけオープンに、連続フロー合成という技術を広めていきたいと考えていますので、引き続きご協力いただければと思っています。