高砂熱学工業

「環境クリエイター」として、脱炭素・サステナブル社会の実現に向けて水素を核とした環境技術を開発し、地球環境に貢献する

高砂熱学イノベーションセンター

高砂熱学工業株式会社は、空調設備工事を軸とした総合的なシステム・エンジニアリングを提供している企業で、現在は空調技術を応用したエネルギー・システムの研究開発にも取り組んでいます。脱炭素社会を目指すべく、環境にやさしいエネルギー源となる水素を生成する装置を研究している、高砂熱学イノベーションセンターの加藤 敦史氏に、お話を伺いました。

高砂熱学工業の事業内容、および加藤様の業務内容について簡単に教えてください。

加藤敦史氏

高砂熱学工業は、1923年(大正12年)に創業した企業で、主に建物の空調設備の設計・施工や、それに伴う技術の研究開発を行っています。特に高砂熱学イノベーションセンターは、本社機能である企画・開発部門と研究開発部門を集約した施設で、ここで私はクリーン・エネルギーである水素の研究をしています。私のチームは水を電気分解して水素を製造する装置の開発を行っており、その生成した水素をどのように活用できるかの研究もしています。

加藤様はなぜ水素に関わる研究に携わることになったのでしょうか?

20年ほど前の入社当時、私は建築現場で施工管理の仕事をやっていました。5年目に入った時、突然研究所の方から水素エネルギーについて研究してみないかという話があったのがきっかけです。当時は弊社が空調設備のエネルギー・コストを抑えるための研究を進めていた時期で、次世代のエネルギー・システムとその原料となる水素の開発に力を注ごうとしているタイミングでもありました。

水素はエネルギー源として具体的にどのような用途で使用されるのでしょうか?

用途は大きく分けて3つあります。1つ目は、水素と酸素の化学反応によって発電して電気として用いること。身近な存在になりつつある燃料電池自動車は、水素を使って自動車を動かすエネルギーを生み出しています。2つ目は石油精製や製鉄所などにおける化学原料として、3つ目は水素自体を燃料として用いることが主な用途です。
実は石油精製プロセスではずいぶん前から水素が使用されています。水素化脱硫や水素化分解などの製油工程では、水素を欠くことはできません。また、製鉄所ではステンレス鋼などの焼鈍処理にも水素が使用されています。さらに、都市ガスと同じように水素自体を燃やすことによって熱エネルギーとして利用することもでき、今後はこの用途が増えてくると考えています。
水素は燃焼しても二酸化炭素を排出しないため、化石燃料と異なり環境にやさしいエネルギー源として期待されてきました。政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするというカーボン・ニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言したことで、水素は今、特に注目されています。

水から水素を生成する水電解装置を開発していく上で、今後の課題はありますか?

水電解装置自体のコストがまだまだ高いのが現状です。また、電気分解するための電気を低コストで仕入れる必要もあります。電気の値段を下げることは弊社では難しいので、装置自体のコストを下げることが今の課題です。弊社の水電解装置が優れているのは、水素生成の効率がよく、生成単価を安く抑えることができる点です。そのためには、いかに少ない部品で効率良くたくさんの水素を生成できるかが最重要課題になります。

貴社の水電解装置において、スウェージロックの製品はどのようなところで用いられていますか?研究室設備-1

主に継手と制御用バルブを使用しています。操作部分でスウェージロックの製品を使うことが多いです。耐久性が高く、取り外しや再取り付けを繰り返しても漏れにくいというところが、スウェージロックの製品を選ぶメリットです。また、機能面だけでなく、必要な製品をすぐに調達していただけるといったサポート面にも満足しています。リードタイムが短いことで、部品待ちに伴う開発の時間的なロスを削減していただけるので、非常に助かっています。

水電解装置を開発する上で、今後どのようにすればスウェージロックの製品がより貢献できますか?

装置の組み立てを行う際に、あらかじめ部品がユニット化されていると、作業が非常に楽になり、大変ありがたいです。ユニット化により装置を小型化・軽量化することによって、部品以外のコストも抑えることができ、装置全体の製造コストを下げることができます。

水素エネルギーを活用した貴社の取り組みは他にありますか?水素製造装置-1

低炭素な電力システムを提供できるよう、水電解装置から生成された水素を蓄えて、エネルギーとして利用できるシステムの開発を進めています。電気分解に使用する電気も、風力発電など再生可能エネルギーを使用することで、水素生成時の二酸化炭素排出量をゼロに抑えることが可能になります。現在は比較的土地に余裕がある地域を対象としたシステムですが、今後は都市部も対象としたシステムの開発を進めていきます。また、地上における水素の生成技術を応用して、月面にある水資源から水電解装置を使って水素を生成し、宇宙で使用するエネルギーを作り出す実験にも近い将来取り組んでいく予定です。

最後に、将来の水素の在り方について、どのように考えていらっしゃいますか?

水素にこだわっているわけではなく、環境負荷低減のためにどんどん再生可能エネルギーを取り入れて、化石燃料を使わない社会を形成していきたいです。それを実現するための選択肢の1つとして、水素が主要なエネルギー源となる将来を思い描いています。弊社が開発した水電解装置を利用してもらうことで、私たちの社会が一歩でも脱炭素な社会に近づくのであれば、こんなに嬉しいことはありません。