東京理科大学

Swagelok® 流体システム・コンポーネント
ヒートアイランド対策の一環として

東京が抱える都市問題のひとつにヒートアイランド現象があります。エネルギー使用量の増加に伴う排熱量の増加、アスファルトからの熱の放出、樹木の減少による水分蒸発量の減少、高層建造物の壁面が光を多重反射することによる加熱といったことが原因となり、都市の気温は年々上がり続けています。他の地球温暖化現象と伴い、東京では過去100 年間で最低気温が 4°C 以上上昇しているというデータもあります。このまま行けば、30 年後の東京では気温が 40 度を超える日も珍しくなくなると予測する学者もいます。

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そこで、地球温暖化・ヒートアイランド対策の一環として、「ドライミスト」が注目を浴びています。ドライミストとは、人工的に微細な霧を発生させ、水が液体から気体に変わる際に周囲から熱を奪う気化熱を利用して周辺気温を最大 2 ~3°C 下げるシステムです。極めて微細な粒子の水滴は、すぐに蒸発するため、人に触れてもほとんど濡れた感触がありません。また、ミストの蒸散作用により直接空気を冷却するため、少ない消費電力量で環境負荷を緩和します。

ドライミストの開発、研究者である東京理科大学工学部建築学科の辻本 誠教授によると「直径 1 センチメートル、長さ2 センチのノズルに水を高圧で送り込むと、1000 分の 16 ミリメートルという極小の水滴が飛び出します。水滴は夏であればあっという間に気化し、その際に周囲の熱を奪って涼しくします。クーラーの 20 分の1のエネルギー消費量で気温を 2-3 度下げることができます」と述べています。

辻本教授のドライミスト・システムは、2005 年に愛知県で開催された「愛・地球博(2005 年日本国際博覧会)」において、暑さ対策の一環としてグローバル・ループなどに設置され、入場者に「涼」を提供しました。この博覧会において、環境配慮活動に関する来場者アンケートで「ドライミストによる周辺温度低減」が第 3 位になるなど、大きな反響を得ています。

一方、ドライミスト・システムの構築には、高気圧に耐えうる、配管システムの実現がネックとなります。微細な霧を作り出すためには 60 気圧に耐え、かつコンパクトな配管が必要ですが、産業分野ならまだしも、一般的に建築分野では 60 気圧の配管システムを構築することは容易ではありません。そこで、ドライミストの配管に、スウェージロックのチューブと継手が活用されました。その結果、初心者でも簡単に取り付けができ、フレキシブルな設計で漏れのない配管システムを実現することができました。

辻本教授はスウェージロック製品を選んだ理由について「ドライミストには、高圧力に耐えることができ、安全で、かつ自由な配管設計が可能である部品が必要となります。この基準からスウェージロックのチューブと継手を選択しました。実際に使用をしてみて、その使い易さに感心いたしました」と述べています。

ドライミストは万博の後も注目を受け、東京都は平成 18 年度重点事業 18「都市と地球の温暖化対策」の中でドライミストの設置に関する補助金(最大 1000 万円 2 件)を出しました。実際に「秋葉原クロスフィールド」や「六本木ヒルズ 66 プラザ」にてドライミストが実装されています。また今年の 7 月下旬には、スウェージロック製品を活用したドライミスト装置が、相模鉄道二俣川駅に 1 週間実装されました。このドライミスト装置は全国テレビの取材を受けるなど、ヒートアイランド現象の対応策としてますます話題を呼んでいます。さらに辻本教授は、住宅での使用を検討し、スウェージロック製品を活用した家庭用ドライミスト・システムの開発と研究にも意欲的に取り組んでおり、地球温暖化対策の一環として大きな注目を浴びています。

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(注)「ドライミスト」は能美防災㈱の登録商標です。