福井大学

福井県の産学官連携発の新技術にスウェージロック製品が貢献

スウェージロック・ジャパンのサポート体制も高く評価

福井県は繊維、電気・一般機械、眼鏡など様々な産業がさかんで、戦後は地元企業独自の研究開発により大きく発展をしてきた歴史があります。 近年、世界の技術革新のスピードが増す中で、地域産業のさらなる発展のため、産学官の力強い連携が進められてきました。この一環として2008年度に、福井県・福井大学・福井県経済団体連合会の共同研究拠点となる産学官連携本部が福井大学内に置かれ、様々な最新技術の試作・評価機器が設置、共用されています。

この産学官連携本部を中心に、福井大学では様々な研究が行われ、2009年までにプレス成型可能な炭素繊維強化アルミニウム合金、高効率タンデム型太陽電池搭載ポータブル電源、軽量・高抗張力ケーブルといった開発の成果を挙げました。現在、その中の一部が生産開発の段階に進み、実用化に向けて福井大学と地域の企業が一体となって、さらなる研究が進められています。

実用化に向けて研究が進むフッ素化技術

産学官連携本部長を務める米沢教授は、自身も長年フッ素の研究で地元産業との共同研究を行っています。フッ素に関する研究は、 20世紀にはフッ素化の限界に挑むものがさかんに行われ、また薬品の分野でも進んでいますが、金属やセラミックスといった無機材での フッ素化学の研究は国内でもあまり例がなく、福井大学で最先端の研究が行われています。その結果、フッ素の量を減らして精密に制御すると、 フッ素化した対象物に今までに見られなかった性能が現れることが分かったのです。

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「漏れが厳禁で高温使用する真空技術ではスウェージロックの品質が頼り」と語る米沢教授

例えば表面に絶妙な配分でフッ素処理を行うと、通常のフッ素にはない、水になじむという新たな特性が出てきました。この技術が実はリチウムイオン電池の 性能アップに応用できるということで、研究が進められています。デジタルカメラなどで使われるリチウムイオン電池は充電と放電を繰り返すと通常サイクル特性が 下がっていきます。しかし、電池の材料に微小な表面フッ素処理を施したところ、サイクル特性が上昇したのです。また、電池の中の元素が溶けてしまうという性質も、 フッ素の量を加減しながら加えることで、性能を保ったまま溶解を止められることが判明しました。さらに、リチウムイオン電池には一定温度になると急激に発熱するという 欠点もありますが、この処理によってその温度が上昇し、安全性が上がりました。これは特に電池自動車などで需要がある特性とのことです。

現在、米沢教授の研究室では、県内でリチウムイオン電池の材料を製造している企業と共同でこの技術の実用化に向けて取り組んでいます。大量のフッ素化が出来るよう、 専用の容器を学生と企業の社員も含めて共同で製作し、大学構内にある「ふくい産学官共同研究拠点」で運用実験を進めています。実現すれば今までの電池と容量は遜色ないまま、 サイクル特性の安定性が向上した製品を世の中に送り出すことができます。米沢教授によると、投資などの条件が揃えばすぐにも実用化できる段階にきているということです。

他にも、ナノダイヤモンドにフッ素処理をするとことで分散性を高めペイントとしての加工を可能にしたり、プラスチックなど電気を通さないものにもメッキを出来る「無電解メッキ」を 現在よりも安価な素材で提供可能にするなど、多くのフッ素技術の研究が進められています。

未知の領域の装置で活躍する
スウェージロック製品

福井大学で様々な活用法が見出されているフッ素ですが、フッ素ガスの処理装置は市販されていません。そこで生みだされたのが「固体試料フッ素化装置」(写真参照)です。 フッ素のリザーバータンクから反応管、ガス分離部、真空排気部といった装置を繋ぎ、試料とフッ素が反応できる装置になっています。この接続部にスウェージロック製品が 多数採用されています。接ガス部には耐食性を重視して全て316Lステンレス鋼で統一されているほか、VCR® メタル・ガスケット式面シール継手を使って漏れのない環境が 作られています。フッ素ガスは危険なイメージがありますが、完全なシール性があれば、学生でも問題なく扱うことができます。

なお、装置ではあえて溶接をしていません。メンテナンスや改造、実験中の反応による爆発などの際に部分的な交換が必要になり、できるだけその交換箇所を最小限に止めるために このような造りになっています。代わりに前述のVCR継手やSwagelokチューブ継手など、漏れのないステンレス鋼の継手を多用しています。物によりますが、1年から3年に1度交換するだけで、 フッ素ガスの環境下で利用可能だということです。

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固体試料フッ素化装置

同研究室では長年スウェージロックを使用してきた経験値から、フッ素のラインにおける安全性が担保されているといいます。過去には専用のバルブをオーダーメイドしていたこともありますが、 実験の結果、Swagelok®チューブ継手付きベローズ・シール・バルブも高圧力への耐性が高い事が判明し、以来、多く活用しています。固体試料フッ素化装置のような繊細なラインには 「使い慣れて性能が分かっているものを使いたい」と米沢教授は語っています。

この装置があれば簡単にフッ素化が行えるため、同じくフッ素関連の研究をしている他大学や企業から、製品スペックに関する問い合わせや、同じ装置を作ってほしいという引き合いも多いそうです。 その際に米沢教授はスウェージロックの製品や、素材別の知識も紹介するといいます。「さらにフッ素化をやりやすく出来る装置を作り、提供していきたいと思っています」と、米沢教授はフッ素化技術の普及にも積極的です。

研究を陰で支えるスウェージロックのサービス

スウェージロックの製品のみならず、サービスもこの最先端の研究を陰で支えています。「納品の早さや分納などへの柔軟な対応が助かっています。なにかあった時に放置するわけにはいかないですし、 短時間でも水などが入ったら錆びてしまうので、絶対に密閉しておきたい。研究室もストックするようにしていますが、早い対応は非常に助かります。」

また、米沢教授の研究室では学生たちが装置などを一から組み立てていますが、これには危険性も伴うため、バルブや継手を扱う際の安全性の教育も重要視しています。これに関して数年前から スウェージロックで学生向けの安全講習会の開催の依頼を引き受けています。2012年度も新年度が始まって間もない5月下旬に研究室に所属する4回生と院生約20名を対象に開催されました。

「本来であれば教員たちが指導しなければならないところですが、時間がないため、専門家であるスウェージロックに依頼しています」と米沢教授は述べています。また、「講習会終了後には学生にも 基礎的な知識が付き、初歩的なミスも減ります」と講習会の有用性も認識されています。座学から実習までを含んだ講習を終えると、学生一人一人に名前入りのスウェージロック受講証明書が発行されますが、 学生にとってはこういった認定も勉学の励みになるようです。 無機材料におけるフッ素化学という研究者の少ない分野ですが、福井県では我々の生活にも応用できる素晴らしい技術が日々開発されています。 このようなフッ素という稀有で使用事例の少ない分野でもスウェージロック製品が採用され、福井県の産学官連携をサポートしています。